「315晩会」という中国国営中央テレビ(CCTV)が毎年3月15日に放送する番組をご存じでしょうか?
3月15日は「世界消費者権利の日(World Consumer Rights Day)」として、1987年に国際消費者連盟組織により消費者の権益保護や権利促進を目的として設けられた記念日です。1997年からCCTVはこの日に消費者権利の保護を目的に番組を放送していますが、この番組では大手企業や外国企業など業種業態を問わず、不正や消費者に不利益となることを行った企業が追求されます。非常に厳しい内容とその影響力により、中国に駐在する日本企業の広報担当者も他人事でなく、固唾を飲んでテレビを観ると言われています。
番組では、覆面調査員が潜入取材を行い、消費者保護という大義名分のもと悪事を暴くという趣旨で構成され、高い視聴率を誇っています。不正を働く企業やサービスが悪い企業が標的にされ、なかには糾弾されて当然な企業もありますが、一方で理不尽な内容であることもあり、国民のガス抜き目的の一環ではないかとされる所以でもあります。
これまでにも日産自動車、ニコン、吉野家などの日本企業や、欧米企業ではマクドナルド、KFC、バーガーキング、ゼネラルモーターズ(GM)、フォルクスワーゲン、アップル、ナイキなど名だたる企業が標的にされています。
アップルの場合、中国国内と海外とでは保証の対応が違うということが指摘され、アップルが中国の法律に従ったと反論すると、今度はそれが不買運動まで発展してしまいました。最終的にはCEOのティム クック氏が中国まで赴き、謝罪する事態になりましたが、SNSの普及がこういった流れに拍車をかけた面もあったようです。
日産のインフィニティも糾弾されたことがあります。この時は、インフィニティQX60で頻繁に発生するアクセルやブレーキの機能喪失や異音などに対して、対応に誠意がないと追求されました。問題が生じた時、強く権利を求める購入者にのみ(口封じの意味もあり)応じる保証延長が伸びるということあったようです。最終的に日産は、1回目の声明で謝罪をし、2回目の声明ではQX60のギアボックスの保証を一律に8年間とするか、もしくは20万kmにすると発表しました。
一方で、マクドナルドの場合、店舗での衛生状況を問題視されたことに対し、即座にWeiboで謝罪を行った結果、ユーザーから称賛の声が上がり、逆に評価を高めることになりました。
また、無印良品も、番組で製造地問題が取り沙汰された際に、税関証明書などのエビデンスを示すと共に毅然とした態度で反論したところ、逆にCCTVに対して非難の声が上がるような状況を作り出すこともできました。
このように、初期対応を間違えると、さらに大きな問題に発展してしまうことになりますが、迅速かつ適切な対応をすることができれば、企業価値の向上に繋げられることもあります。
この番組の恐ろしいところは、必ずしも正当な評価でない場合もあり、ある意味で“いちゃもん”のような追求を受けることもあり、しかも影響力があるので、各社の広報担当者は毎年戦々恐々としながらテレビを観るというのが、毎年話題にもなっていました。
今年はドイツのフォルクスワーゲン社が標的となりましたが、中国に進出している企業にとっては、来年以降も気になる一日となりそうです。