海外展開のデメリット(リスク)

海外展開のデメリット(リスク)

ひとつ目は、人材管理の難しさです。日本に比べ、多くの国では終始雇用制度を採用している国は少なく、ステップアップのための転職は当たり前のため、人材の定着率は高くはありません。給与など待遇面で不満があったり、より良い条件の職場があれば、積極的に転職をするのが一般的です。文化や言語の異なる外国員従業員をマネジメントすることは、日本とはまた異なる大変さがあります。その国の国民性を理解し、相手の文化や習慣を尊重しながら業務を進めていく必要があります。

また、近年はアジア諸国なども賃金が上昇傾向にあり、今後は、工場勤務の外国人労働者を安く雇うことは難しくなっていくかもしれません。また、新興国や途上国では、優秀な現地人材の取り合いが発生していて、優秀な人材を確保しようと思うと、相場以上の賃金を払わざるを得ないという状況もあります。

海外の法制度や規制、政治情勢や治安などのカントリーリスクもデメリット(リスク)になります。最近では、日本人社員が中国に出張する際のビザ申請時の手続きが大変になり、必要以上(と思われる)個人情報を記載しなければいけないなど、日本企業として憂慮すべき事態がありました。また、中国の反スパイ法は、実際に逮捕、勾留されている日本人がいて、その逮捕理由も明確でないため、中国に関わりのある日本企業を戦々恐々とさせています。

進出先の国の経済状況により、証券市場や為替市場に混乱が生じることもありえます。資産価値が大きく毀損したり、想定以上の円高や円安が進んだ場合、売上や仕入れの金額に

誤差が生じ、経営問題に発展するかもしれません。極端な例として、デフォルト(債務不履行)が発生して、国全体の経済が破綻することも、絶対にないとは言い切れないのです。

分野や言語、商習慣の違いによるリスクもあります。例えば宗教に関してはイスラム教ではラマダンがあり、1日5回のお祈りがあります。食事に関しては、食べることが禁止されているものもあり、ハラールという制度もあります。インドネシアでは、行政機関の対応が非常に属人的で、手続きが何ヶ月も進まないということもよくある話です。その他にも、日本では常識とされていることも、海外では非常識ということもあります。そのような文化の違いを完全に理解することは難しく、現地駐在員を悩ませる原因にもなります。

最後に、撤退の難しさもあります。進出があれば、撤退もありえます。しかし、国によっては自国の利益や自国民の権利保護にため、簡単に撤退ができないということもあります。撤退に関して、多額の費用が掛かったり、1年以上の時間を要したり、当初想像している以上に大変だったりしますので、進出前にはよく調べておきましょう。可能であれば、実際に現地に赴き、体験してみることをお勧めします。

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