近年は中国経済に陰りが見られ、中国経済が失速というニュースも目にするようにもなりました。春節での延べ90億人の移動については、これまで含まれなかったマイカー移動なども含まれ、集計方法の変更がなければ昨年を下回るのではないかという声も聞かれます。中国では地方政府が春節に合わせ、日本円にして数億円から数十億円のオンラインクーポンを発行するなど、低迷する消費に刺激を与えようと躍起ですし、これらも中国経済の状況を反映しているのかもしれません。
近年中国では大手企業が経営危機に陥ることが頻発しています。中国の大手不動産デベロッパーの「中国恒大集団(エバーグランデ)」は2023年8月17日にアメリカにて連邦破産法15条を申請。その後、不動産大手の「碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)」も経営危機に陥ったというニュースが流れ、商業施設運営大手の大連万達集団(ワンダ・グループ)も資金繰りが悪化し資産売却をするなど、世界の注目を集めました。これまで好調な中国経済を牽引してきた不動産市場は、かつてはGDPの3~4割を占めるほどの勢いでしたが、いまやその勢いは完全に失われています。
不動産業界以外でも、バイドゥなどが出資した新興電気自動車(EV)メーカー「威馬汽車科技集団(WMモーター・テクノロジー)」は10月10日上海市第三中級人民法院に事業再編の審査を申請していて、伊藤忠商事が出資した「安徽奇点智能新能源汽車」も経営破綻しています。また、2024年1月5日に、資産運用大手(影の銀行と呼ばれるシャドーバンキング)の中植企業集団が北京市第一中級人民法院(中等裁判所)に破産申請をし、受理されましたが、これは最近の中国では最大規模の企業破綻となっています。
これまで中国では、“ゾンビ企業(経営破綻しているにもかかわらず、金融機関や政府機関の支援によって存続している企業)”の存在が指摘されてきました。
不動産業界では、全体の44.5%がゾンビ企業であるというデータもありましたし、“鬼城”と呼ばれるゴーストタウンの問題もありました。鬼城とは、不動産開発の行き詰まりにより未完成で放置されたり、入居者が集まらず廃れたりしたマンション郡や地域のことです。鬼城問題は2010年頃から鬼城問題は顕在化しましたが、改善されることなく現在に至っています。
シャドーバンキングは、通常の融資を受けられない相手に高利子で貸付けたり、投資したりする手法で、シャドーバンキングから不動産市場に資金が流れていて、住宅価格の高騰にも拍車をかけるなど、金融リスクを高める要因として警戒されてもいました。
中国国家統計局が2023年1月17日に発表した2023年の中国の国内総生産(GDP)は、前年比5.2%増となり、政府目標の「5%前後」は達成しました。ただ、これまで先送りしてきた問題が顕在化しつつあり、コロナ渦の影響も受けた現在の中国経済は、消費や物価、雇用など多くの面で失速しています。
2023年7月分から若者の失業率が公表されなくなるなど、いくつかのデータが公表停止になり、実態を図りにくくなっているのは事実ですが、習近平国家首席に権力が集中している体制では、他国に比べ思い切った対策を迅速に打つこともできるという強みもあり、今後も政策及び経済動向に注目していきたいと思います。